アベンジャーズ/インフィニティウォー9点/10点満点中イラク国民から見たイラク戦争

やっちまいました。数日前にこれが届いてしまいましたアベンジャーズ/インフィニティウォー4KUHDムービーコレクション(初回限定)。

インフィニティウォーは映画館で見てかなり気に入った映画だし、しかもこれはアベンジャーズ1〜3の4KUltraHDがセットになった夢のような商品だし、欲しいっちゃ欲しかったのですが、どうせ来年になったら4もセットにしたのが出るんでしょという思いもあって購入を迷っていました。セル版ソフトに対する私の複雑な思いはこちら

ただ、転売屋さん達が暴れて価格が乱高下していたので値段が下がってるうちに予約だけしておいて、いらなければ後でキャンセルするかと1か月ほど前にAmazonをポチり、そのまま予約のことを忘れておりました。あ〜1万円越えか〜。

せっかくなので、作品レビューをしておきます。

9点/10点満点中

史上最大規模のお祭り映画

のキャストを見てください。何人のスターが出てるんだという大変な状況になっています。マーベルスタジオ10周年のアニバーサリー作品にして、製作費3億2千万ドルという史上最大規模の映画だけあって、内容の方はえらいことになっています。ソーとハルクというアベンジャーズ内でも規定外の強さを誇るヒーロー2名が軽くあしらわれるほど圧倒的なサノスのパワーを冒頭で見せることで、これはとんでもない敵がやってきたという印象を強く残し、そこからはひたすらに見せ場の連打。

ひとつひとつの見せ場のクォリティの高さや、オリジナルのアベンジャーズと、ここ数年で単独主演作が公開されたばかりのニューヒーローを組み合わせるというお祭り企画ならでは面白さ。特に、単独主演作では他のヒーロー達とは隔絶された世界で動いているような印象もあったガーディアンズの面の合流のさせ方は見事なものだったと思います。

また、アベンジャーズ前2作の敵方はザコとラスボスだけで中ボスがいないことが気になっていたのですが、本作ではギニュー特戦隊のような中ボスが世界各地に出没し、個の見せ場を盛り上げます。ワンシーンだけですが、懐かしのチタウリが出てきたこともうれしかったです。

信頼のルッソ演出

ルッソ兄弟の演出は、相変わらずキレッキレ。いろんな所でいろんなヒーローが戦ってばかりの作品なので、ともすれば観客がダレてしまう可能性もあった素材ですが、敵が攻め込んでくる前の兆候の積み重ねや、絶妙なタイミングでの味方の救援など、個の戦いにはきちんとリズムがあり、最適なタイミングでアクセントとなる出来事が起こるので、そういった問題は回避できています。武器を新調したソーが戦線復帰する場面なんて、あまりの興奮で過呼吸になりそうでした。

また、深刻な空気になった後にはちゃんと笑える場面を入れてきており、随所に死が描かれる本作を完全にダークな作風にはしていないサジ加減もよかったです。

予定調和を完全に壊したクライマックス

そしてクライマックスですよ。敵の目的が完全達成され、アベンジャーズが敗北するというまさかまさかの展開。なんだかんだ言ってヒーローは勝つものだと思って見ていた私は度肝を抜かれたし、この後、生き残り組はどうやって盛り返すのかという点への興味を強く惹かれたところで本作は終了。ドクターストレンジが言っていた1400万通りの中の唯一の勝ち手がここから開始されるのでしょうが、頼むから早く続きを見せてくれ!とケィンファイギの術中に見事にはまってしまいました。

サノスはヒーロー達と同類

本作で興味深いのはサノスの存在であり、彼は悪意を持っていたり、私利私欲のために他者を犠牲にしようとする通常のィランとはかなり趣が異なります。人口増加で母星が滅んだ経験を踏まえ、このまま生命が増え続ければそのうち宇宙は崩壊して全滅するから、最小の犠牲生命の半分の死で継続可能性を確保しようという、ある意味では救世主的な目的を持っています。

また、人を愛する心も、人の死を悼む心も持っています。ソウルストーンの代償として愛する者の命をレッドスカルお懐かしい!から要求された惑星ォーミルでのくだり。同行したガモーラからはサノス、あなたは誰も愛していないのだから、ソウルストーンは永久に手に入らないわねと言われたものの、実はサノスはガモーラを心の奥底から愛しており、かつ、大義のためであればそのガモーラを犠牲にできるほどの強い目的意識を持っており、涙を流しながらガモーラを崖から突き落としてストーンを入手しました。

これって、宇宙を守るという大目的のために愛するィジョンもろともマインドストーンを破壊しようとしたクライマックスでのスカーレットウィッチの行動とほぼ同じであり、犠牲を出してでも大義を守ろうとするサノスの姿勢にはヒーローに近いところがあります。本作で描かれるのは正義vs正義の衝突なのです。

強者の独断を許した結果

そこで思い出すのがシビルウォー/キャプテンアメリカレビューはこちらのテーマであった正義論であり、キャプテンアメリカは責任ある強者による力の執行を認めるべきとの主張をしていました。シビルウォー内戦とインフィニティウォー際限なき戦争のテーマはここで繋がるのですが、キャップの主張するアメリカ的な正義の行きつく先はサノスが仕掛けてきた際限なき戦争であり、国内においては目的通りに機能していたアメリカ的正義も、国外に向けた途端に他者を巻き込む狂気へと変貌するという現実世界への考察にもなっています。

また、シビルウォーの内容がイラク戦争開戦前の国連安保理でのアメリカvs国連の応酬戦を象徴していたとすると、本作は民主主義の普及を目的に米国が起こしたイラク戦争を象徴しているとも考えられます。民主主義は絶対に正しいのだから、今は理解できなくてもその価値観を受け入れなさい。アメリカは創造的破壊のつもりでフセイン政権を打倒しましたが、その後に待っていたのは民主主義が普及してイラク国民から感謝されるようなバラ色の国際社会ではなく、際限なき混乱でした。本作のラストの舞台がNYのような大都市ではなく、西欧文明とは一線を画したワガンダだったという点にも、この辺りの意図が隠されているような気がしました。

ちょっとだけ文句

細かい難を指摘すると、キャップ、バッキー、ブラックウィドウ、ファルコンら生身勢が従前作品よりも明らかに戦闘力が上がっているというズルがあったり、アイアンマンのナノマシンスーツが何でもあり過ぎてかえって戦いの面白さを削いでいたりという点は気になりました。

ま、そんなこと言うのは野暮と言えるほどの特盛大サービス映画であり、10年間、すべてのマーベル作品を見てきて本当に良かったと思えるほど至福の時を味わうことができました。今回思いがけず買ってしまったUHDも繰り返し見ていきたいと思います。

Avengers:InfinityWar

監督:アンソニールッソジョールッソ

脚本:クリストファーマルクススティーンマクフィーリー

原作:スタンリージャックカービー

製作:ケィンファイギ

出演者:ロバートダウニーJrクリスヘムズワースマークラファロクリスエァンススカーレットヨハンソンドンチードルベネディクトカンバーバッチトムホランドチャドウィックボーズマンゾーイサルダナカレンギラントムヒドルストンポールベタニーエリザベスオルセンアンソニーマッキーセバスチャンスタンイドリスエルバダナイグリラピーターディンクレイジベネディクトウォンポムクレメンティエフデイバウティスタィンディーゼルブラッドリークーパーコビースマルダーズグウィネスパルトロウベニチオデルトロジョシュブローリンクリスプラットサミュエルLジャクソンショーンガンウィリアムハート

音楽:アランシルェストリ

撮影:トレントオパロック

製作会社:マーベルスタジオ

配給:ウォルトディズニースタジオモーションピクチャーズ

公開:2018年4月27日アメリカ日本

上映時間:149分

製作国:アメリカ合衆国